むし歯の発生要因
むし歯菌とも呼ばれるミュータンス菌は、お口の中の糖質をエサにして酸を作ります。この酸によって歯が溶かされた状態が「むし歯」です。
もともとの歯の質や細菌の量、糖質の摂取という要因に、時間の経過が加わることで、むし歯の発生リスクが高まることが分かっています。
図にあるように、それぞれの要因の輪が重なる部分が大きいと、それだけむし歯になりやすいということです。要因の輪は「糖分を控え、食後はすぐ歯磨きをする」「歯医者の定期検診でフッ素を塗布し、歯質を強くする」等により小さくすることができます。
要因の輪の重なりを減らすことで、むし歯を予防していきましょう。
むし歯の早期発見を行います
むし歯の進行度を数値化できる「むし歯検出装置」を使用して、早期のむし歯の発見や、悪化していないかどうかの確認をします。これにより「治療が必要」な状態か「経過観察」でよいかの判別を行うことができます。検査時はレーザー光が歯にあたりますが、痛みはありませんのでご安心ください。
むし歯の進行度と治療方法
初期のむし歯(C1)
まだ歯に穴はあいておらず、痛みなどの自覚症状はありません。ただ歯の表面が溶かされツヤがなくなっており、歯が白く濁って見えたり、茶色に変色してザラつくこともあります。
初期のむし歯であれば削る部分も少なく済み、詰め物による最小限の治療で改善します。症例によっては、むし歯にEr:YAGレーザーを照射し、フッ素を塗布することで、むし歯の進行を抑制し歯を削らずに済む場合もあります。
レジン充填
レジン充填とは、歯にレジン(プラスチック)を盛って、光で硬化する治療法です。歯を削る量は最小限にとどめられ、1回の来院で治療が済むこともあります。保険適応の治療です。
進行したむし歯(C2)
むし歯が進行し穴があいてしまいました。冷たいものを食べると歯にしみることがあり、自覚症状が出てきます。当院では、なるべく削らず神経を抜かない治療を行っています。むし歯部分を丁寧に取り除き、詰め物を詰める処置を行いますが、削る部分が多くなると全体を覆う被せ物になることもあります。
詰め物
むし歯の範囲が少ない治療では、インレー処置(詰め物)を行います。むし歯除去と被せ物の装着のために、最短2回ご来院いただきます。インレーの素材には様々なものがありますので、お気軽にご相談ください。
メタルインレー(保険)
ゴールドインレー(自費)
ハイブリッドセラミックインレー(自費)
被せ物
むし歯の範囲が大きい場合は、被せ物の治療となります。
ジルコニア(自費)
被せ物の全体が、人工ダイヤと呼ばれるジルコニアでできており、審美性の高い仕上がりが期待できます。ほとんど変色しないので、長年使用できます。接着力や耐久性に優れ、むし歯になるリスクを軽減できます。また金属を使用していないため、金属アレルギーの心配がありません。
ジルコニアセラミッククラウン(自費)
ジルコニアを内部に使用することで強度を保ち、外側には透明度の高いセラミックを焼き付けます。セラミックにより色を調整できるため、天然の歯のような細かい色の再現が可能です。
ゴールド(自費)
生体親和性に優れた素材のため、アレルギーの方にも最適な素材です。審美性には優れないため、奥歯の被せ物として使用するケースが一般的です。
メタルボンド(自費)
内面には合金(金・銀・銅・プラチナ等)・表面は陶材(セラミック)の2層構造でできています。被せ物となる部分を削って型を取り製作し、耐久性の高いセメントで歯に接着します。
CAD/CAM(保険、自費)
患者さんのお口をスキャンして、専用の装置でハイブリッドを削り出して作製する被せ物です。
当院の保険CADCAM治療
保険適用が可能です
条件によっては保険適用が可能です
- 必須条件
- CAD/CAM冠を装着する歯の左右の反対側に、上下でしっかり噛み合う大臼歯(の歯 ※ブリッジ含む)がある。
- どちらかの条件
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- CAD/CAM冠を装着する歯と左右同じ側に、上下でしっかり噛み合う大臼歯(の歯 ※ブリッジ含む)があり、CAD/CAM冠に力がかかりすぎない。
- CAD/CAM冠を装着する歯と左右同じ側に、上下でしっかり噛み合う大臼歯(の歯 ※ブリッジ含む)がない、あるいは義歯の場合は、その手前までの歯がしっかり噛み合う(ブリッジ、乳歯を含む)。
※金属アレルギーの方は従来通り、この限りではありません。歯科医師にご相談ください
銀歯(保険)
金属性のため耐久性が高い代わりに、審美性には欠けます。
歯髄まで進行したむし歯(C3)
むし歯が大きな穴になって象牙質のすべてに及び、神経まで達したむし歯です。何もしていなくてもズキズキと激しい痛みを感じるようになります。
神経の保護が可能な場合は、覆髄法治療によって神経を残せるよう努めます。神経まで細菌に侵された場合でも、歯の寿命を延ばせるよう歯の根の治療(根管治療)を行います。
歯の寿命を残すための治療
神経を保護する覆髄法治療
近年、技術の進歩によって覆髄法治療の精度が格段に向上し、今までなら抜いていた神経も、保存できる確率が高くなってきています。
そのため、当院では神経の保存が可能と判断した場合は、痛みが生じている部分(感染している部分)だけを取り除き、神経を保護する覆髄法治療で可能な限り神経を残し、歯の寿命を伸ばせるよう努めています。
覆髄法治療について
- 神経の重要性
- 神経が露出したからといって、すぐに神経を抜く必要はありません。神経は歯に栄養を届ける重要な組織です。また刺激を痛みとして伝えたり、細菌感染の際に炎症として危険を知らせたりしてくれる役割があるので、神経を取ってしまった歯は極端にもろくなり、寿命が短くなってしまいます。
- 神経を取ることによる
歯根破折のリスク - 歯を失う原因には、歯周病やむし歯、外傷などもありますが、最も多い原因は歯根破折で、約6割を占めるといわれています。歯根破折が生じた歯のほとんどは神経のない歯であり、過去にむし歯などが原因で神経を取る処置がされています。また、2番目に多い原因である歯の根の病気も、神経を取られた歯に生じる問題です。両方を合わせると7割以上が神経のない歯であり、歯を失わないためには神経を守ることがいかに重要であるかが分かります。
- 神経を守るために
- 神経の近くまで進行した重度のむし歯は、刺激により神経が炎症を起こしやすくなっています。そのため、当院ではMTAセメントを用いて露出した神経を保護する、覆髄法治療を行います。
【MTAセメントの特長】
MTAセメントは主成分がカルシウムのため、生体親和性が高い素材です。強アルカリ性(Ph12)の性質を持つことから殺菌効果が高く、むし歯菌を不活性化させることができるため、従来の治療方法と比べて、高い確率で神経を残すことができます。密封性が高いことも、MTAセメントの利点です。通常のセメントは硬化時に若干縮まることから、わずかなすき間ができ、そこに細菌の繁殖リスクが生じてしまいます。MTAセメントは硬化しながら膨張する性質があるので、神経の露出部をすき間なく埋めることができ、細菌繁殖を抑制することができるのです。
- 覆髄法治療のメリット
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- 不必要に歯質を削らず、刺激の強い薬剤を使う必要がないため、歯質が弱くならなず、歯が壊れてしまうリスクを軽減できます。
- 温度に対しての感覚を失うことがありません。また、咬む力に対しての敏感さを失わないので、歯に不必要な強い力がかからずに済みます。
- 神経を残すことで、成長途中の歯根も正常に成長できるため、その結果、歯の寿命が長くすることができます。
- ※覆髄法治療は、従来より高い確率で神経を保存できる治療方法ですが、歯の状態によっては治療後に神経の炎症等がおこり抜髄処置が必要になる場合があります。
- ※覆髄法治療の直後は、一時的に歯が過敏になり、冷たいものなどでしみたり痛む場合があります。神経の回復に伴い、通常これらの症状は軽減・消失していきます。
歯の神経を残せることで将来的な抜歯リスクを軽減し、健康な歯を維持することができます。
ご自身で判断せず、ぜひご来院下さい。
歯の根の治療(根管治療)
神経を残すことが難しいと判断された場合でも、歯の根の治療を行い患者さんご自身の歯を残します。
根管治療は歯の神経を取り除き、神経が入っていた根管を洗浄・消毒して薬剤を詰め、最後に被せ物を被せてご自身の歯の機能を回復させる治療法です。
根管は細くて複雑な形状をしています。場合によって、当院では歯科用CTを使用し、繊細な根管を3D画像でしっかりと把握し治療計画を立てています。
ラバーダム
せっかく根管をきれいにしても、患部に唾液が入り再び細菌感染してしまうと、根管治療の成功率が下がってしまいます。
当院ではラバーダム(薄いゴムの保護膜)を使用することで、細菌から歯を隔離しながら清潔な状態で治療を行うこともあります。
ファイバーコア
神経を取り除いた歯は、土台を立てて被せ物を被せることで噛む機能を回復させます。土台にはいくつか種類がありますが、グラスファイバー繊維を樹脂で固めたファイバーコアは、やや弾力があり歯質との接着も良好です。また水分があるので歯質にも優しく、歯を長持ちさせることができます。保険の適用が可能となるケースもございますので、お気軽にご相談ください。
歯質が失われた歯(C4)
むし歯の再発や進行を防いで健康な日々を
むし歯の治療が終わったら、再発予防のためにメインテナンスにお越しください。
4か月~半年に1度、歯医者で歯垢・歯石除去を行いましょう。メインテナンスではお口の健康チェックを行ない、トラブルの早期発見、早期治療のお手伝いをさせていただきます。
ご自身の歯を長く健康に使うためにも、予防のために歯医者をご活用ください。